連載第1回
0. 序:重要視していること
1. 「再利用」のときの手間をなるべく少なくするために
 1.1. 鉄則1「スペースを使ってレイアウトしないこと」
連載第2回
 1.2. 鉄則2「行ごとに直接、書式を指定してしまわないこと」
 1.3. 鉄則3「オートフォーマットは使わないこと」
 1.4. 鉄則4「すべての編集記号を表示させること」
連載第3回
 1.5. 例文番号
連載第4回
 1.6. テンプレート
連載第5回
2. 文書作成の効率化のために
 2.1. 目次とアウトラインモード
連載第6回
 2.2. revision mode(変更履歴)
3. 文書を電子的にやりとりする場合のために
連載第7回
4. 補遺
 4.1. 樹形図を描く方法について
 4.2. 「Symbol」フォントについて
 4.3. 本/論文の整理方法について

 質問/コメント/意見/感想のある方はこちらのフォームからどうぞ。個別にはお返事できないかもしれませんが、なるべく、このページ上で返答するようにいたします。


研究者のための Word 利用法
第4回
1.6. テンプレート

 上の 1.2節で「テンプレート」という概念を導入したが、自分で活用したことがなければ具体的なイメージがわかないかもしれないので、ここでもう少し説明しておく。

1.6.1. 2種類のテンプレート

 Word のテンプレートには、大きく分けて2つの機能がある。

  (A) Word の機能を拡張したり、自分流に調整したりする。
  (B) 文書の書式を指定する。

 (A) の方は、具体的には、マクロを加えたり、ショートカットキーを指定したり、メニューやツールバーの表示を変えたり、というもので、自分の使いやすい設定を常に組み込んでおきたい場合に利用する。Word と連携するソフトウェアを組み込んでいる場合には、知らない間に (A) タイプのテンプレートが登録されていることもある。自分の Word にどのようなものが組み込まれているかを確認するためには、「ツール」メニュー → テンプレートとアドイン を選択する。そこで出てくる「アドインとして使用できるテンプレート」というのが (A) のタイプのテンプレートの一覧である。
 (A) に対して (B) の方は、文書の種類/用途によって変えたいのが普通なので、常に組み込むというよりは、必要に応じて選択できる状態が望ましい。(B) のタイプのテンプレートは、文書の新規作成を選んだときにテンプレートの一覧として表示されるものである。
 Word では、この (A) と (B) を基本的に別のフォルダに格納している。バージョンが変わるごとに、そのフォルダの場所が変わってしまい、少し面倒であるが、Cドライブの中で "Normal.dot" というファイルを検索し、見つかった Normal.dot(複数ある場合には最も日付新しいもの)のあるフォルダが (B) のテンプレートを置くべきフォルダである。そして、そのフォルダから1つ上のフォルダにいき、そこで見つかる Word というフォルダを開いて、その中の STARTUP というフォルダが(原則的に)(A) のテンプレートを置くべきフォルダとなる。

1.6.2. Normal.dot

 Normal.dot 自体もテンプレートの1つであり、何も特別な指定をしなければ、どの文書にも、この Normal.dot がテンプレートとしてつくことになる。ただし、Normal.dot というのは、特別な位置付けがされているテンプレートで、フォルダとしては (B) のところに置かれているにもかかわらず、働きとしては (A) のタイプを兼ねている。スタイルやショートカットキーなどの設定などをすると、たいていデフォルトで Normal.dot に記録されることになっているが、そうすると、起動時に常に自動的に設定が読み込まれて便利である一方、その指定をはずすことが難しくなる。特に複数の人で同じマシンを使う場合には、Normal.dot に新たな指定を書き込むことは避けるべきだと思う。自分用の (A) タイプのテンプレートを作成し、それを必要な場合だけアドインとして組み込むようにした方がいいだろう。

1.6.3. スタイル指定のテンプレート作成の勧め

 (B) タイプのテンプレートは、必要に応じて何種類でも用意しておけばよい。現在のテンプレートと別のテンプレートにつけ変えるには、先ほどと同様に、「ツール」メニュー → テンプレートとアドイン を選択し、「添付」というボタンを押すと、(B) タイプのテンプレートが格納されているフォルダの内容が表示されるので、その中から適切なテンプレートを選択すればよい。
 自分好みのスタイルの設定を Normal.dot に書き込んでいる人も多いように思うが、私としては、その方法は勧めない。昨今は、文書を e-mail などで電子的にやりとりする機会が増えている。人の手に渡った場合でも、当然、自分が意図しているのと同じように表示されてほしいわけであるが、どうやら Word では、その文書についているテンプレートと同じ名前のテンプレートを受け取った人が持っている場合、受け取った人のテンプレートの指定にしたがって書式が表示される仕組みになっているらしい。Normal.dot というテンプレートは全員が持っているテンプレートなので、Normal.dot をテンプレートとした文書で自分なりのスタイルを指定していても、人の手に渡ったとたん、その指定が無効になってしまうのである。もちろん、独自のテンプレートをつけている場合でも、たまたま受け取った人が同じ名称のテンプレートを持っていたら同じことであるが、Normal.dot 以外のテンプレートにしておけば、自分のスタイル指定が無効になってしまう可能性はずっと低くなるだろう。
 なお、現在 Normal.dot に設定された指定を他のテンプレートに移行させたい場合には、「ツール」メニュー → テンプレートとアドイン を選択し、そこにある「構成内容変更」のボタンを押す。左右のウィンドウに表示されている「文書またはテンプレート」をいったん閉じてファイルを指定しなおせば、どんなテンプレート間の移行も簡単に行うことができる。

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