この「論理的な議論の構築方法について」について

連載第1回
 1. ここで目指していること
連載第2回
 2. 「論理的」とは?
  2.1. 命題
  2.2. 推論の方法
連載第3回
 3. 論理を使って考えを整理する
  3.1. 言語事実を命題でおきかえる
  3.2. 議論を作っていく
  3.3. 議論を命題でおきかえる
  3.4. まとめて書いてみる
連載第4回
 4. 結論を真実に近づけていくために
  4.1. 真であると仮定しなければならない前提をへらしていく
  4.2. チェックポイント
連載第5回
 5. 論理的であることと説得的であること

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「論理的な議論の構築方法について」
第1回
1. ここで目指していること

 論文を書くときには、次の3つの条件を満たすことを目指すべきだと思う。

(1) a. 論理的に結論が導かれていること (logic)
  b. 結論が真実にせまっていること (truth)
  c. その面白さ・必要性などを読者にうったえる説得力をもっていること (rhetoric)

この中で最も本質的なものは(1b)であるが、(1a)と(1c)も論文を作り上げていく上で重要な役割をになっている。
 (1a)は、いいかえれば、自分の思いつきをどれだけ客観的に示せるかということである。思いつきというものは、漠然と頭の中にあるときの方がよく思えるものであるが、欠点が見えなければ改良もできない。一般的に言って、はじめから欠点のない分析を思いつくことはきわめて少ないので、自分の思いつきのどこに欠点があるのかということをつきとめることができなければならない。論理は自分の思考の流れを客観的にチェックできる有効な道具である。
 (1c)は、いいかえれば、どれだけ読者の主観にうったえることができるかということである。これは、読者がどのような知識をもっていて何を知りたがっているかということがわかっていないとうまくいかない。これは大変難しいことであるが、いくら正しい結論であっても、人にわかってもらえない間は存在していないのと同じことになってしまうので、どのように提示すれば効果的に伝わるかということは普段からも気にとめておくべき重要なことである。
 このように、(1a)と(1c)は、どちらも重要なものであるが、そのはたす機能が異なっているので、この条件を同時進行的に満たそうと思っても無理がある。特に、読者にわかってもらいたいという気持が先走ると、読者より先に自分が「説得」されてしまい、自分の分析の欠点が見えなくなるというようなことにもなりかねない。(1a)は(1b)を高めていくための手段、(1c)はそれを効果的に相手に伝えるための手段であるから、論文を作り上げていく段階を分けて、それぞれの目標のもとで改良していくのがいいと思う。

(2)
問題点を見つける/分析を思いつく
↓ (1a)
論理的に書く
↓ (1b)
改良すべき点を見つける/分析を思いつく
↓ (1a)
論理的に書く
・・・・
↓ (1c)
説得的に書く

現在のところ私は(1a)→(1b)→(1a)…の過程をくりかえしているところで、(1c) についてはまだ手がついておらず、(1b) についてもそのほんの一部しかつかめていない。しかし、(1a)についておおよその全体像が見えてきたように思うので、以下にそれを中心にまとめてみたい。