2013 前期(学部生向け)言語学・応用言語学演習 II

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

講義題目

 論文の読み方・書き方

授業目的

 この授業では、入門的な講義とは少し違った切り口から、言語学の研究というものを体験してほしいと思っている。卒論などでは、単に、書かれていることを理解するのではなく、自分で考察を進め分析をしていく能力が求められる。ただ、いきなり「自分なりの分析をまとめて主張する」と言われても、どこから手をつけていいか、迷ってしまうに違いない。この授業では、最近の学術雑誌に載った論文をいくつか取り上げ、研究を進めていく基礎体力をつけることを目標としている。

授業の進め方

  • 授業の前に、各自、予習課題に取り組んでもらい、その週の月曜日までにメールで提出してもらう。(詳しいことは、下の説明を参照すること。)
  • 授業の開始時に、主に前回までの授業内容に関する簡単な復習テストを行う。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。
  • 授業は、最初の3回は講義が中心であるが、第5回以降は、学生による発表が中心となる。
  • 授業内容の一覧は、下の表に示している通り。
  • 原則的に全員、グループでの発表に取り組んでもらう。院生さんが準備を手伝ってくれるので、どの時期までにどのように準備を進めるか、院生さんとよく連絡をとって進めること。

教科書について

 最初の3回の授業では、『論文を書くためのWord利用法』(上山あゆみ)くろしお出版 を用いる。定価は、税込みで 1680円 で、生協にも置いてくれてある。授業で使うのは、初めの3回だけであるが、卒論を書く際にも利用できると思うので、持っていて損はないと考えている。
 第5回以降の授業で使う論文のコピーは、原則的に1週間前に配布する。授業を欠席した人は、次の週の論文のコピーを言語学研究室に取りにくること。

授業内容

(更新日:2013.07.09)
第1回 2013.04.18.
論文 授業の目的と方法の説明
予習課題 なし
第2回 2013.04.25.
論文 論文を書くための Word 利用法(1〜5章)
予習課題 ling01 : メールの件名とファイル名を指定された形式にして、Word 文書を添付すること(文書の中身は、空でも何でもよい。)
第3回 2013.05.09.
論文 論文を書くための Word 利用法(5章)
予習課題 ling02 : 「Usual.dot」をテンプレートとした文書を添付すること(文書の中身は自分の所属と氏名だけでよい)
第4回 2013.05.16.
論文 論文を書くための Word 利用法(5〜8章)
予習課題 ling03 : (i) 「スタイル」の機能が用いてあり、(ii) 例文の自動連番と例文番号参照を含む文書を作成して添付すること(中身は、無意味なものでもよい)
第5回 2013.05.23.
論文 宮腰幸一 (2009) "「かけ」構文と並行事象構造", 『日本語文法』9巻2号, pp.36-52.
予習課題 ling04 : 「かけ」動詞構文の例文を作り、その例において開始前読みが可能かどうか、途中読みが可能かどうか、答えなさい。
第6回 2013.05.30.
論文 三宅知宏 (1996) 「日本語の移動動詞の対格標示について」, 『言語研究』110, pp.143-168.
予習課題 ling05 : 次の(1),(2)の対立は、どのように説明するべきか。本文を読んで、該当する一般化を答えなさい。
(1) a. 不二子がバイクを降りた。
  b. ルパンが牢獄を脱出した。
(2) a. *泡が鍋をあふれた。
  b. *麦茶がポットの口をこぼれた。
第7回 2013.06.06.
論文 村上佳恵 (2012) 「現代日本語の形容詞分類について:様態のソウダを用いて」, 『日本語文法』12巻1号, pp.20-36.
予習課題 ling06 : 次の文の「ソウダ」は「内部ソウダ」と「外部ソウダ」のどちらか、答えなさい。
  a. 太郎は苦そうにコーヒーを飲んだ。
  b. 犬が眠たそうに餌を食べた。
  c. 花子は優しそうな顔で皮肉を言った。
  d. 楽しそうな遊園地
  e. 楽しそうな声
第8回 2013.06.13.
論文 田中秀毅 (2011) 「日本語における概数詞の遊離文について」, 『日本語文法』11巻1号, pp.139-156.
予習課題 ling07 : この論文の中の定義によると、次の a.〜e. が「基数詞」「概数詞」「数量詞」のどれに当てはまるか答えなさい。
 a. 5、6人  b. 数人  c. みんな  d. 3人  e. 大半
第9回 2013.06.20.
論文 志澤剛 (2011) 「N/1/ナラN/2/条件形式の意味・機能と認可条件」, 『日本語文法』11巻2号, pp.77-93.
予習課題 ling08 : 「建造物なら塔」に比べて、「建造物ならこの塔」「歴史的建造物ならこの塔」というようにすると容認性が上がるのはなぜか、今回の論文に即して説明しなさい。
第10回 2013.06.27.
論文 中俣尚己 (2007) 「日本語並列節の体系―「ば」・「し」・「て」・連用形の場合―」『日本語文法』7巻1号
予習課題 ling09 : 以下の4つの例文のうち、a,b の容認度が低くなるのはなぜか、今回の論文に即して説明しなさい。
 a. *あの山は中腹に山小屋があれば、頂上が展望台だ。
 b. ?あの山は中腹に山小屋があるし、頂上が展望台だ。
 c. あの山は中腹に山小屋があって、頂上が展望台だ。
 d. あの山は中腹に山小屋があり、頂上が展望台だ。
第11回 2013.07.04.
論文 謝福台 (2009) "連用形・テ・シ・バ・ガ・ケドによる並列表現の体系 ---「等質性・異質性」と「取り立て助詞モ・ハとの共起」を軸に---", 『日本語文法』9巻2号, pp.88-104.
予習課題 ling10 : 以下の例の容認性の違いを、今回の論文はどのように説明するか、述べなさい。
 a. 新発売のスマホは扱いにくいけど、高性能だ。
 b. *新発売のスマホは扱いにくく、高性能だ。
第12回 2013.07.11.
論文 高木 千恵 (2005) 「関西若年層にみられる標準語形ジャナイ(カ)の使用」, 『日本語の研究』第1巻2号.
予習課題 ling11 : 本文に従い、以下の例文は何用法なのか答えなさい。
 a. もしかしてあの小学校、運動会じゃないか?
 b. 小学校の思い出と言えば運動会じゃないか?
 c. どこに行ってたんだ。心配したじゃないか。
 d. ほら、私って結構おしゃべりじゃないですか。
 e. あの人、もしかして田中先生じゃない?
第13回 2013.07.18.
論文 定延利之・田窪行則 (1995) "談話における心的操作モニター機構:心的操作標識「ええと」と「あの(ー)," 『言語研究』108, 74-93.
予習課題 ling12 : 次の対話の空所に「ええと」「あのー」のいずれか適切なほうを入れ、それぞれなぜそちらのほうが適切なのか、今回の論文の主張を踏まえて説明しなさい。
 おじいさん: そうめんにはどんな薬味が合うかな?
 おばあさん: (   )、ああ、(   )、わさびが合うんじゃないかしら。
第14回 2013.07.25.
論文 研究の進め方と論文の読み方(ver. 13/04/14)
予習課題 ling13 : 授業評価

単位の認定と評点について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、各種課題と授業の参加状況に基づいて判定する。目安としては、予習課題をすべてと、グループ発表、そして出席があれば単位はあると思ってよい。出席等が足りない人は、レポート課題を提出してもらう。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

予習課題の設問は、前の週までにこのページにあげておく。予習課題は、短い答えのある具体的な設問で、原則的に、当該の論文を一読すれば答えられる簡単な設問にする予定である。つまり、この予習課題の目的は、授業の前に、少なくとも一度、その週の論文に目を通してもらうことにある。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の週の月曜日 17:00 までに必着とする。
<提出方法>
  • 予習課題の提出は e-mail で。宛て先は、授業中に指示する。
  • メールのSubject(件名):「ling##-姓名」
    たとえば、田中大輝くんが提出する場合の件名は、「ling02-田中大輝
  • 添付ファイルがある場合、その添付ファイルのファイル名も件名と同じにすること。
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • 課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。

    発表について

     初回の授業のときに、発表の担当者を抽選で決める。作業の進め方については、具体的に説明したプリントを配るので、それを参照すること。

    レポート課題について

    予習課題や復習テストを普通にこなしていれば、レポートを提出する必要はない。あくまで「救済策」である。
    <提出方法>
  • レポート課題の提出は、予習課題とは別の e-mail で(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと)。提出先は予習課題と同じ。
  • メールのSubject(件名):「report-姓名」
    たとえば、田中大輝くんがレポート課題を提出する場合の件名は「report-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • <添付ファイル>
  • レポート課題は、添付ファイルで提出すること。
  • 添付ファイルのファイル名もメールの件名と同様に、「report-姓名」とする。
  • <レポートの修正>
  • レポートの内容をよりよいものにするために、内容の改訂を求めることがある。コメントはメール本文に書く場合もあれば、添付ファイルに書き込む場合もある。上山のコメントの入ったファイルは、オリジナルと区別するために、ファイル名の最後に「-au」と記されている。たとえば、「report-田中大輝」というファイルにコメントが加えられると、「report-田中大輝-au」というファイル名で返送される。なお、1回目の上山からの返事を引用した形のメールにすること。
  • やり直したレポートを提出する場合には、ファイル名に提出回数を含めること。たとえば、初めて提出した場合のファイル名が「report-田中大輝」ならば、2回目に提出する時のファイル名は「report-田中大輝-2」となる。
    <締め切り>
    レポート課題の第1稿の締め切りは7月25日最終版の提出の締め切りは8月31日とする。
    <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。