2012 後期(学部生向け)言語学・応用言語学講義 VII

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

2013.02.28.
 2月12日以前に届いたレポートには、すべて返信をしていたのですが、その後、少したてこんでしまったため、採点はしましたが、1つ1つ返信はしていません。特に何か聞きたいことがある人は、あらためてメールをしてもらえると助かります。

2013.02.06. 18時49分
 現在の時点で届いたレポートには、すべてコメントを返信しています。なので、まだ返信が来ていない人がいたら、それはこちらに届いていない印ですので、再送するようにしてください。

講義題目

 日本語研究の基礎

授業目的

 この授業では、実際に日本語を材料として統語論の研究を進めていくための基礎技能を身につけることを目標とする。予備知識は必要としない。受講学生の制限はないが、授業の主たるターゲットとして想定しているのは、言語学・応用言語学専攻の2年生である。

 この授業の中心にすえられている作業は、
  1. 自分で関連する例を集め、
  2. データを整理し、
  3. 一般化を目指す
ということである。そのために、予習課題として、授業内容と関連する作業をまず自力で行ってもらう。授業では、予習課題の作業の中で出てきた問題点を取り上げ、討論もまじえて進めていく。その過程で、統語論研究において留意しなければならないことや知っておかなければならないことが浮き彫りになればと考えている。(予習課題提出に関する詳しいことについては、下の項目を参照のこと。)

 整理した結果が参考書等の記述と一致している必要はないが、最低限了解しておくべき点については少し解説する。ぜひ理解しておいてほしい事項に関しては、授業の開始時に行う復習テストで確認していく。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。

 また、授業で説明したことを定着させるために、レポート課題に取り組み仕上げてもらう。レポート課題は、下の表に提示してあるように、たくさんの選択肢があるので、自分の興味に応じて、最低1つを選び、取り組んでほしい。(レポート課題提出に関する詳しいことについては、下の項目を参照のこと。)

授業内容

(更新日:2012.03.11)
第1回 2012.10.11.
題目 はじめに
説明する内容 この授業の目標について
授業の進め方についての説明
予習課題
関連するレポート課題
第2回 2012.10.18.
題目 「単語」とは?
説明する内容 自立語 付属語 複合語 和語 漢語
予習課題 No.2  次の文章を単語に分けると、どのように分かれるでしょうか。
「レポート課題の最終的な締め切りは、1月末日とする。しかし、レポート課題が授業内容を踏まえていない場合やデータの集め方がかたよっている場合など、内容をよりよいものにするために、書き直してもらう場合があるので、なるべく、もっと早い時期に第1稿を提出すること。」
関連するレポート課題 No.2  後半の語が同じなのに、組み合わせによって連濁する場合としない場合があるペアをなるべくたくさん集めて整理する。
第3回 2012.10.25.
題目 「形容詞」とは?
説明する内容 日本語における範疇の区別
予習課題 No.3  日本語の形容詞の例を5つあげ、ある単語を「形容詞」と判定するための定義を書く。(単に辞書等に書いてあることを鵜呑みにして書かないように! 参考にしても構わないが、その定義でちゃんと正しく「判定」できるか、自分なりに考えてみること。参考にしたものがある場合には、出典を忘れずに。)
関連するレポート課題 No.3  日本語の範疇のリストを作成する。どんな語をとっても、その範疇が何であるか決定できるように注意して、それぞれ定義と例を付すこと。
第4回 2012.11.01.
題目 「切る」と「着る」
説明する内容 動詞の活用 母音語幹 子音語幹 自他対応 助動詞
予習課題 No.4  「切る」と同じ活用のパターンの語を5つあげる。
関連するレポート課題 No.4  (i) 自他対応の動詞(「続く/続ける」・「当たる/当てる」)のペアをいろいろ挙げ、(ii) それぞれの語幹の形態素を書き、(iii) その対応のパターンにはどのようなものがあるか整理する。
第5回 2012.11.08.
題目 「食べさせられたくない」
説明する内容 述語の形 タ形 テ形
予習課題 No.5  語幹の形態素がそれぞれ次の音で終わる動詞の例を書く。 (1) ...m- (2) ...k- (3) ...g- (4) ...w-
関連するレポート課題 No.5  自分の詳しい方言で "標準語" と異なる活用があれば、それがどのようなパターンになっているか(わかりやすく例をあげながら)分析する。
第6回 2012.11.15.
題目 「めきめき背が伸びた」!?
説明する内容 選択制限
予習課題 No.6  「最近、あの子は、どんどん{実力を伸ばしてきた/背が伸びてきた}」に対して「最近、あの子は、めきめき{実力を伸ばしてきた/???背が伸びてきた}」、もしくは、「紙を破る/紙が破れる」に対して「約束を破る/???約束が破れる」、のように意味が通じてもよさそうなのに、普通は使われない表現の組み合わせの例をあげる。
関連するレポート課題
第7回 2012.11.22.
題目 「足を洗う」「頭が切れる」
説明する内容 慣用句 軽動詞
予習課題 No.7  「慣用句」とはどのようなものか、自分の考える定義を述べて、例をあげる。(いくつかのタイプに分けて述べてもかまわない。)
関連するレポート課題 No.7  日本語の「慣用句」のタイプを分類し、例をあげる。
第8回 2012.11.29.
題目 「山( )登る」
説明する内容 述語と格助詞の関係
予習課題 No.8  「 山( )登る」のカッコ内に入りうる格助詞を2つ答え、意味が違うとすれば、どのように違うか、説明する。
関連するレポート課題
第9回 2012.12.06.
題目 「コーヒー( )飲みたい」
説明する内容 格助詞の交替現象
予習課題 No.9  英語ならば目的語に相当するのに、日本語では格助詞「が」が伴っている句を含む例をあげ、その場合の述語にどのような特徴が見られるか(必要ならばタイプ分けをして)述べなさい。
関連するレポート課題 No.9  項の取り方によって述語を分類する。
第10回 2012.12.13.
題目 「勝つ( )は難しい」
説明する内容 さまざまな埋め込み文
予習課題 No.10  動詞/形容詞/形容動詞/「名詞+だ」を「述語」と呼ぶこととし、「述語」1つにつき、「節」が1つあるとしよう。文の中には、様々な形で節が埋め込まれていることがあるが、それにはどのようなパターンがあるか、例をあげて述べなさい。
関連するレポート課題 No.10  動詞と埋め込み文標識の共起可能性をまとめる。
第11回 2013.01.10.
題目 「私のは?」
説明する内容 さまざまな役割の「ノ」
予習課題 No.11  「ノ」の役割/用法には、どのような種類があるか、例をあげて述べる。
関連するレポート課題
第12回 2013.01.24.
題目 「君が犯人だ」
説明する内容 主題(theme)の「は」と対照(contrast)の「は」/総記(exhaustive listing)の「が」
予習課題 No.12
(1) 太郎が来た ... 「が」を強調して読んだ場合とそうでない場合との意味の違いを述べなさい。
(2) 太郎は来た ... 「は」を強調して読んだ場合とそうでない場合との意味の違いを述べなさい。
関連するレポート課題 No.12  なるべく整理して、述語と直接意味関係を持っていない「は」の例をあげる。
第13回 2013.01.31.
題目 「やったー!」
説明する内容 さまざまな意味の「タ」
予習課題 No.13  動詞が「〜タ」の形になっていても「過去」のことを表しているわけではない例をあげる。
授業評価
関連するレポート課題 No.13  動詞のアスペクトを表す表現にはどのようなものがあるか、それぞれ複数の例文をあげて、意味の違いを考察する。

参考書

  • 上山あゆみ (1991) 『はじめての人の言語学 〜ことばの世界へ』 くろしお出版。 \2300。
 授業の内容には、上記の本の2章と3章の内容が含まれている。ただし、授業で直接この本を用いることはしないので、必要ないと思えば買う必要はない。
  • 庵 功雄 (2001) 『新しい日本語学入門 〜ことばのしくみを考える』 スリーエーネットワーク。 \1800。
 授業で紹介する考え方と必ずしも同じではない部分もあるが、一読すると、日本語の仕組みについての全体像がバランスよくつかめると思う。各項目ごとに参考文献も丁寧に紹介されているので、さらに考察を進めたいときにも役に立つだろう。

単位の認定と提出物について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、予習課題・復習テスト・レポート等の提出物に基づいて判定する。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

 予習課題は、指定された特徴を持つ語・例文を集めてくるというものが多い。例文は自分の頭で考えても、何か資料から集めても、どちらでもかまわない。なるべく、バラエティに富んだ例を見つけるように努力すること。予習課題は、単位をとるかどうかと関係なく、原則的に授業に参加する全員が提出してほしい。提出されたものを授業の材料の一部として用いる。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の週の月曜日の17:00までに必着とする。
<提出方法>
  • 予習課題の提出は e-mail で。宛て先は、授業中に指示する。
  • メールのSubject(件名):「予習##-名前(専攻)」
  • たとえば、第2回の授業のための予習課題を田中大輝くんが提出する場合の件名は、「予習2-田中大輝(言語)」
    <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • 課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • <添付ファイル>
    添付ファイルによる予習課題の提出も一応受け付けるが、テキストだけの内容の場合は、なるべくe-mailの本文に直接書いてもらった方がありがたい。何らかの理由でファイルを添付する場合には、そのファイル名も、メールの件名と同じく、「予習##-名前(専攻)」というふうにすること。
    <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。

    レポート課題について

    <締め切り>
    レポート課題の最終的な締め切りは、4年生および他学部生は 2月10日、それ以外は 2月21日とする(普段の宿題の宛て先にメールで)。しかし、レポート課題が授業内容を踏まえていない場合やデータの集め方がかたよっている場合など、内容をよりよいものにするために、書き直してもらう場合があるので、なるべく、年内に第1稿を提出すること。また、1月中に第1稿の提出がない場合には、レポート提出の権利を失うものとする。一度に原稿が集中して、どうしてもコメントが遅くなりがちなので、4年生および他学部生でコメントを急ぐ人は、件名に「4年生」もしくは「他学部生」というように記し、必要ならば、再送すること。
    <提出方法>
  • レポート課題の提出は、予習課題とは別のメールにすること。(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと。)提出先は予習課題と同じ。
  • メールのSubject(件名):「report##-名前(専攻)」
    たとえば、レポート課題No.3を言語学専攻の田中大輝くんが提出する場合の件名は「report3-田中大輝(言語)」
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • <添付ファイル>
  • レポート課題は、添付ファイルで提出すること。
  • 添付ファイルのファイル名もメールの件名と同様に、「report##-名前(専攻)」とする。
  • <レポートの修正>
  • レポートの内容をよりよいものにするために、内容の改訂を求めることがある。コメントはメール本文に書く場合もあれば、添付ファイルに書き込む場合もある。上山のコメントの入ったファイルは、オリジナルと区別するために、ファイル名の最後に「-au」と記されている。たとえば、「report2-田中大輝」というファイルにコメントが加えられると、「report2-田中大輝-au」というファイル名で返送される。
  • やり直したレポートを提出する場合には、ファイル名に提出回数を含めること。たとえば、初めて提出した場合のファイル名が「report2-田中大輝」ならば、2回目に提出する時のファイル名は「report2-田中大輝-2」となる。なお、1回目の上山からの返事を引用した形のメールにすること。
  • <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。最低、レポートを1本完成させることを単位認定の条件とする。