2009 前期(学部生向け)言語学・応用言語学演習 II

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。

講義題目

 日本語の形態論・統語論・意味論

授業目的

 この授業では、入門的な講義とは少し違った切り口から、言語学の研究というものを体験してほしいと思っている。卒論などでは、単に、書かれていることを理解するのではなく、自分で考察を進め分析をしていく能力が求められる。ただ、いきなり「自分なりの分析をまとめて主張する」と言われても、どこから手をつけていいか、迷ってしまうに違いない。この授業では、最近の学術雑誌に載った論文をいくつか取り上げ、研究を進めていく基礎体力をつけることを目標としている。

授業の進め方

  • 授業の前に、各自、予習課題に取り組んでもらい、前日までにメールで提出してもらう。(詳しいことは、下の説明を参照すること。)
  • 授業の開始時に、主に前回までの授業内容に関する簡単な復習テストを行う。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。
  • 授業は、第3回までは基本的に講義が中心であるが、第4回以降は、学生による発表が中心となる。
  • 授業内容の一覧は、下の表に示している通り。
  • 原則的に全員、グループでの発表に取り組んでもらう。院生さんが準備を手伝ってくれるので、どの時期までにどのように準備を進めるか、院生さんとよく連絡をとって進めること。

教科書について

 最初の3回の授業では、『論文を書くためのWord利用法』(上山あゆみ)くろしお出版 を使います。定価は、税込みで 1680円 ですが、生協にも置いてくれてあるはずです。授業で使うのは、初めの3回だけですが、卒論を書く際にも利用できると思うので、持っていて損はないんじゃないかと思っています。
 第4回以降の授業で使う論文のコピーは、原則的に1週間前に配布します。授業を欠席した人は、次の週の論文のコピーを言語学研究室に取りにくること。

授業内容

(更新日:2009.07.09)
第1回 2009.04.16.
内容 授業の目的と方法の説明
論文を書くための Word 利用法(1〜5章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』
予習課題 なし
第2回 2009.04.23.
内容 論文を書くための Word 利用法(5章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』
予習課題 「Usual.dot」をテンプレートとした文書を添付すること(文書の中身は自分の所属と氏名だけでよい)
第3回 2009.05.07.
内容 論文を書くための Word 利用法(5〜8章)
論文 上山あゆみ 『論文を書くための Word 利用法』
予習課題 (i) 「スタイル」の機能が用いてあり、(ii) 例文の自動連番と例文番号参照を含む文書を作成して添付すること(中身は、無意味なものでもよい)
第4回 2009.05.14.
内容 述語の項とヴォイス1
論文 高橋葉子 (2006) "「N1のN2」名詞句における「の」の脱落―N2が漢語動名詞でN1がその項である用例に注目して―", 『日本語文法』6巻2号, pp.98-115.
予習課題 本論文にしたがって、「非対格自動詞」の漢語動名詞の例と「非能格自動詞」の漢語動名詞の例を,それぞれ3つずつあげなさい。
第5回 2009.05.21.
内容 述語の項とヴォイス2
論文 鈴木容子 (2008) "日本語における非行為者主語の他動詞文---構文のタイプとその関連性---", 『日本語文法』8巻2号, pp.71-87.
予習課題 非行為者主語の「使役的他動詞文」の例文と非行為者主語の「再帰的他動詞文」の例文を、それぞれ1つずつ挙げなさい。
第6回 2009.05.28.
内容 取り立て詞1
論文 定延利之 (2001) "探索と現代日本語の「だけ」「しか」「ばかり」", 『日本語文法』1巻1号, pp.111-136.
予習課題 論文中で著者が「探索」という人間の認知行動と関わりがあると述べている言語表現を3つ挙げなさい。
第7回 2009.06.04.
内容 取り立て詞2
論文 茂木俊伸 (2002) "「ばかり」文の解釈をめぐって", 『日本語文法』2巻1号, pp.171-189.
予習課題 以下の「ばかり」文それぞれについて,(i)「存在解釈」が可能か、(ii)「反復解釈」が可能かを述べなさい。
  1. 今日の授業では男の子ばかりが指された。
  2. その時は女の子ばかりがそこにいた。
  3. [ゲームの中で] 私ばかり鬼だ。
  4. 男性が右の棚に本ばかり置いた。
第8回 2009.06.25.
内容 否定1
論文 松井晴子 (2003) "否定極性項目の節を越えた呼応", 『日本語文法』3巻1号, pp.117-126.
予習課題 以下の5つの例は、本論で「コピュラ文」と「架橋表現(bridge expression)」の文の例であるとして挙げられているものである。さてそれぞれの例について、著者はどちらのタイプの文であると述べているか。
  1. 彼は花子がめったに会う人ではない
  2. 太郎は花子しか来ると思わない[or 太郎は急行券しか買っておかなかった]
  3. この店はデザートがたいしておいしくない店だ
  4. 私は花子に何も頼んだ覚えがない
  5. 田中先生は学生が全員尊敬する先生ではない
第9回 2009.07.02.
内容 否定2
論文 朴江訓 (2007) "「しか…ない」の「多重NPI」現象について", 『日本語文法』7巻2号, pp.154-170.
予習課題 論文中に出てくる否定極性表現(NPI)を5つあげ、2種類の NPI が共起している文を1つ考えてください。
第10回 2009.07.09.
内容 接続助詞1
論文 岩男考哲 (2003) "引用文の性質から見た発話「〜ッテ。」について", 『日本語文法』3巻2号, pp.146-162.
予習課題 著者は「―ッテ。」について、<知識未定着><押し付け><表出的><伝聞的>と4つの用法に分類しているが、以下の例は、著者の分類に基づくとそれぞれどの用法に当たるか答えなさい。
  1. A「先生がレポートを提出しろッテさ」
    B「ああ、もう提出したよ」
  2. A「どうしてそんなに驚くの?」
    B「いや、意外と優しいとこあるんだなぁッテ」
  3. A「よし、早速始めようか」
    B「今やるんじゃないッテ」
  4. A「俺はもうすぐクビになるらしいよ」
    B「らしいよッテ?」
第11回 2009.07.16.
内容 接続助詞2
論文 金善眞 (2005) "「〜ッテ」文の引用的性質と機能", 『日本語文法』5巻1号, pp.70-88.
予習課題 授業評価

次の文について、(i) 場1,場2はどのような場か,例文に即して具体的に述べなさい。(ii) この文において、場の二重性がはっきりしているかどうかを答えなさい。
   太郎「花子さんが卵を買ってきてって」

単位の認定と評点について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、各種課題と授業の参加状況に基づいて判定する。目安としては、予習課題をすべてと、グループ発表、そして出席があれば単位はあると思ってよい。出席等が足りない人は、レポート課題を提出してもらう。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

予習課題の設問は、前の週までにこのページにあげておく。予習課題は、短い答えのある具体的な設問で、原則的に、当該の論文を一読すれば答えられる簡単な設問にする予定である。つまり、この予習課題の目的は、授業の前に、少なくとも一度、その週の論文に目を通してもらうことにある。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の週の月曜日 17:00 までに必着とする。
<提出方法>
  • 予習課題の提出は e-mail で。宛て先は、授業中に指示する。
  • メールのSubject(件名):「予習##-姓名」
    たとえば、第2回の授業のための予習課題を田中大輝くんが提出する場合の件名は、「予習02-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • 課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。

    発表について

     初回の授業のときに、発表の担当者を決める。希望でグループを組んだ上で、担当したい論文を "早い者勝ち" で登録していく。
    <発表で目指すこと>
  • その論文で、どのような現象が扱われているか、それについて、どのようなことが述べられているかを、なるべくわかりやすくまとめてハンドアウトにする。
  • 例文や結論がまとめられた部分は、原則的に省略せずに引用する。正確に写し、元の論文の何ページの何番の例文かという出典を必ず付けておくようにする。
  • よくわからない部分については、そのまま「疑問点」としてハンドアウトに載せればよい。
  • その論文の主張について自分の意見がある場合には、ハンドアウトに載せてかまわない。自分の意見は、なければなくてもかまわない。
  • <準備の方法>
  • ハンドアウトは、授業の第1〜3回目に説明する方法にしたがって、Word で作成すること。
  • 発表の1週間前までに、ハンドアウトの第1稿が出来上がっていなければ間に合わないと思っておいてほしい。
  • SA の時間などを活用して、積極的に院生と相談してハンドアウトを完成させること。
  • <ハンドアウト最終稿の提出の方法>
  • ハンドアウトの最終稿ができたら、上山および TA の院生に添付ファイルで送ること。印刷をしてもらう必要があるので、いつまでに送ったら間に合うか、事前にちゃんと連絡をとっておくこと。
  • ファイルを添付したメールに、誰がどこを(もしくは、どういう作業を)担当したかを書いておくこと。
  • レポート課題について

    <提出方法>
  • レポート課題の提出は、予習課題とは別の e-mail で(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと)。提出先は予習課題と同じ。
  • メールのSubject(件名):「report-姓名」
    たとえば、田中大輝くんがレポート課題を提出する場合の件名は「report-田中大輝
  • <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
  • <添付ファイル>
  • レポート課題は、添付ファイルで提出すること。
  • 添付ファイルのファイル名もメールの件名と同様に、「report-姓名」とする。
  • <レポートの修正>
  • レポートの内容をよりよいものにするために、内容の改訂を求めることがある。コメントはメール本文に書く場合もあれば、添付ファイルに書き込む場合もある。上山のコメントの入ったファイルは、オリジナルと区別するために、ファイル名の最後に「-au」と記されている。たとえば、「report-田中大輝」というファイルにコメントが加えられると、「report-田中大輝-au」というファイル名で返送される。
  • やり直したレポートを提出する場合には、ファイル名に提出回数を含めること。たとえば、初めて提出した場合のファイル名が「report-田中大輝」ならば、2回目に提出する時のファイル名は「report-田中大輝-2」となる。
    <締め切り>
    レポート課題の第1稿の締め切りは7月22日最終版の提出の締め切りは8月31日とする。
    <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。