2006 後期(学部生向け)言語学・応用言語学講義 VII

ここに連絡事項を掲載することがありますので、受講者はときどきチェックするようにしてください。
2006.11.08.
 授業中に連絡したように、宿題提出用のメールアドレスを変更しています。今まで使ってきた homework[@]gges.xyz は近々抹消する予定です。新しいメールアドレスは授業中に連絡しましたが、わからなくなった人は問い合わせてきてください。
2006.11.08.
 集中講義等で欠席した人は、ハンドアウトに載っている復習テストをメールで送ってもらえれば、若干考慮したいと考えています。

講義題目

 日本語研究の基礎

授業目的

 この授業では、実際に日本語を材料として統語論の研究を進めていくための基礎技能を身につけることを目標とする。予備知識は必要としない。受講学生の制限はないが、授業の主たるターゲットとして想定しているのは、言語学・応用言語学専攻の2年生である。

 この授業の中心にすえられている作業は、
  1. 自分で関連する例を集め、
  2. データを整理し、
  3. 一般化を目指す
ということである。そのために、予習課題として、授業内容と関連する作業をまず自力で行ってもらう。授業では、予習課題の作業の中で出てきた問題点を取り上げ、討論もまじえて進めていく。その過程で、統語論研究において留意しなければならないことや知っておかなければならないことが浮き彫りになればと考えている。(予習課題提出に関する詳しいことについては、下の項目を参照のこと。)

 整理した結果が参考書等の記述と一致している必要はないが、最低限了解しておくべき点については少し解説する。ぜひ理解しておいてほしい事項に関しては、授業の開始時に行う復習テストで確認していく。これは、出欠確認を兼ねており、細かい得点化はしないが、よっぽど出来の悪いものは区別したいと思っている。

 また、授業で説明したことを定着させるために、レポート課題に取り組み仕上げてもらう。レポート課題は、下の表に提示してあるように、たくさんの選択肢があるので、自分の興味に応じて、最低1つを選び、取り組んでほしい。(レポート課題提出に関する詳しいことについては、下の項目を参照のこと。)

授業内容

(更新日:2009.06.26)
第1回 2006.10.03.
説明する内容 この授業の目標について
授業の進め方についての説明
第2回 2006.10.24.
題目 「単語」とは?
説明する内容 自立語 付属語 複合語 和語 漢語
予習課題 No.2  新聞や雑誌などから100字程度の文(1文でなくてもよい)を抜き出し、「単語」に区切る。
関連するレポート課題 No.2-1  純粋の和語でないのに連濁が起こっている例をなるべくたくさん集める。
No.2-2  後半の語が同じなのに、組み合わせによって連濁する場合としない場合があるペアをなるべくたくさん集める。
No.2-3  2字の漢語で、それぞれの漢字を独立して読む場合の音読みと発音が異なっている例をなるべくたくさん集め、パターン別にする。
第3回 2006.10.31.
題目 「形容詞」とは?
説明する内容 日本語における範疇の区別
予習課題 No.3  日本語の形容詞の例を5つあげ、ある単語を「形容詞」と判定するための定義を書く。(単に辞書等に書いてあることを鵜呑みにして書かないように! 参考にしても構わないが、その定義でちゃんと正しく「判定」できるか、自分なりに考えてみること。参考にしたものがある場合には、出典を忘れずに。)
関連するレポート課題 No.3  日本語の範疇のリストを作成する。どんな語をとっても、その範疇が何であるか決定できるように注意して、それぞれ定義と例を付すこと。
第4回 2006.11.07.
題目 「切る」と「着る」
説明する内容 動詞の活用 母音語幹 子音語幹 自他対応 助動詞
予習課題 No.4  「切る」と同じ活用のパターンの語を5つあげる。
関連するレポート課題 No.4  (i) 自他対応の動詞(「続く/続ける」・「当たる/当てる」)のペアをいろいろ挙げ、(ii) それぞれの語幹の形態素を書き、(iii) その対応のパターンにはどのようなものがあるか整理する。
第5回 2006.11.14.
題目 「食べさせられたくない」
説明する内容 述語の形 タ形 テ形
予習課題 No.5  語幹の形態素がそれぞれ次の音で終わる動詞の例を書く。 (1) ...m- (2) ...k- (3) ...g- (4) ...w-
関連するレポート課題 No.5  自分の詳しい方言で "標準語" と異なる活用があれば、それがどのようなパターンになっているか(わかりやすく例をあげながら)分析する。
第6回 2006.11.28.
題目 「めきめき背が伸びた」!?
説明する内容 選択制限
予習課題 No.6  「最近、あの子は、どんどん{実力を伸ばしてきた/背が伸びてきた}」に対して「最近、あの子は、めきめき{実力を伸ばしてきた/???背が伸びてきた}」のように意味が通じてもよさそうなのに、普通は使われない表現の組み合わせの例をあげる。
第7回 2006.12.05.
題目 「足を洗う」「頭が切れる」
説明する内容 イディオム 軽動詞
予習課題 No.7  "イディオム" とはどのようなものか、自分の考える定義を述べて、例をあげる。(いくつかのタイプに分けて述べてもかまわない。)
関連するレポート課題 No.7  日本語の「イディオム」のタイプを分類し、例をあげる。
第8回 2006.12.12.
題目 「山( )登る」
説明する内容 述語と格助詞の関係
予習課題 No.8  「 山( )登る」のカッコ内に入りうる助詞を2つ答え、意味が違うとすれば、どのように違うか、説明する。
第9回 2006.12.19.
題目 「コーヒー( )飲みたい」
説明する内容 格助詞の交替現象
予習課題 No.9  英語ならば目的語に相当するのに、日本語では格助詞「が」が伴っている句を含む例をあげる。
関連するレポート課題 No.9  項の取り方によって述語を分類する。
第10回 2007.01.09.
題目 「勝つ( )は難しい」
説明する内容 さまざまな埋め込み文
予習課題 No.10  日本語の従属文(文の中に文が埋め込まれているもの)には、どのようなパターンがあるか、例をあげて述べる。
関連するレポート課題 No.10  動詞と埋め込み文標識の共起可能性をまとめる。
第11回 2007.01.16.
題目 「私のは?」
説明する内容 さまざまな役割の「ノ」
予習課題 No.11  「ノ」の役割/用法には、どのような種類があるか、例をあげて述べる。
第12回 2007.01.23.
題目 「やったー!」
説明する内容 さまざまな意味の「タ」
予習課題 No.12  動詞が「〜タ」の形になっていても「過去」のことを表しているわけではない例をあげる。
授業評価
関連するレポート課題 No.12  動詞のアスペクトを表す表現にはどのようなものがあるか、それぞれ複数の例文をあげて、意味の違いを考察する。

参考書

  • 上山あゆみ (1991) 『はじめての人の言語学 〜ことばの世界へ』 くろしお出版。 \2300。
 授業の内容には、上記の本の2章と3章の内容が含まれている。ただし、授業で直接この本を用いることはしないので、必要ないと思えば買う必要はない。
  • 庵 功雄 (2001) 『新しい日本語学入門 〜ことばのしくみを考える』 スリーエーネットワーク。 \1800。
 授業で紹介する考え方と必ずしも同じではない部分もあるが、一読すると、日本語の仕組みについての全体像がバランスよくつかめると思う。各項目ごとに参考文献も丁寧に紹介されているので、さらに考察を進めたいときにも役に立つだろう。

単位の認定と提出物について

  • 学期末試験は課さない。
  • 単位は、予習課題・復習テスト・レポート等の提出物に基づいて判定する。
  • 課題の提出状況とその時点での暫定的な予想評点を表にして公開するので、気になる人は、授業終了時に参照して対策を相談してほしい。

予習課題について

 予習課題は、指定された特徴を持つ語・例文を集めてくるというものが多い。例文は自分の頭で考えても、何か資料から集めても、どちらでもかまわない。なるべく、バラエティに富んだ例を見つけるように努力すること。予習課題は、単位をとるかどうかと関係なく、原則的に授業に参加する全員が提出してほしい。提出されたものを授業の材料の一部として用いる。
<締め切り>
予習課題は、当該授業の前日(月曜日)の17:00までに必着とする。ただし、授業のハンドアウトに用いるのは、原則的に前々日(日曜日)の17:00ごろまでに届いたものだけとする。
<提出方法>
予習課題の提出は e-mail で。
  • 宛て先:homework[@]gges.xyz (← @ の前後の [ ] を取り除いたものがメールアドレス)
  • メールのSubject(件名):「予習##-名前(専攻)」
    たとえば、次回の予習課題を田中大輝くんが提出する場合の件名は「予習2-田中大輝(言語)」
    <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
    <添付ファイル>
    添付ファイルによる予習課題の提出も一応受け付けるが、テキストだけの内容の場合は、なるべくe-mailの本文に直接書いてもらった方がありがたい。何らかの理由でファイルを添付する場合には、そのファイル名も、メールの件名と同じく、「予習##-名前(専攻)」というふうにすること。
    <確認>
    メールがこちらに到着したら「受け取りました」というメールが自動返信されるはずなので、それが来ない場合には、宛て先etc.が正しいかどうかをチェックして再度送信すること。
    <評価>
    予習課題は、(i) (締め切りまでに)提出されたかどうかと (ii) 内容の出来(A:特別に良い/B:普通にちゃんと出来ている/C:提出はされているが内容がともなっていない) の両方を評価する。
  • レポート課題について

    <締め切り>
    レポート課題の最終的な締め切りは、1月末日とする。しかし、レポート課題が授業内容を踏まえていない場合やデータの集め方がかたよっている場合など、内容をよりよいものにするために、書き直してもらう場合があるので、なるべく、もっと早い時期に第1稿を提出すること。
    <提出方法>
    レポート課題の提出は、予習課題とは別のメールにすること。(=1つのメールに、予習課題とレポート課題を混在させないこと。)
  • 宛て先:homework[@]gges.xyz (← @ の前後の [ ] を取り除いたものがメールアドレス)
  • メールのSubject(件名):「report##-名前(専攻)」
    たとえば、次回の2つめのレポート課題を田中大輝くんが提出する場合の件名は「report2-2-田中大輝(言語)」
    <書き方>
  • メール本文の冒頭に、専攻・学年・氏名を書くこと。課題のあとに、授業の感想・質問・自己紹介・メッセージなども自由に記載してもらってかまわない。
  • 出典がある場合には、その出典を必ず明記すること。
    <添付ファイル>
    レポート課題は、原則として添付ファイルで提出すること。ファイル名は、「report##-名前(専攻)」とする。ただし、やり直しで別バージョンのものを提出する場合には、名前のあとに提出回数をつける。たとえば、田中くんが上記のレポートを初めて提出する場合は「report2-2-田中大輝(言語)」、2回目に提出する場合は「report2-2-田中大輝(言語)-2」となる。
    <確認>
    メールがこちらに到着したら「受け取りました」というメールが自動返信されるはずなので、それが来ない場合には、宛て先etc.が正しいかどうかをチェックして再度送信すること。
    <評価>
    レポート課題は、最終版の出来によってA+ 〜 C の評価をする。最低、3種類のレポートを完成させることを単位認定の条件とする。